1月10日
豪雪の長野へ〜田中康夫の改革〜
会派の4人で2日にわたり長野県を視察。この冬は12月から徳島でも何度か積雪があり、豪雪地帯では集落が孤立し、雪掻き中の事故などで死者が90名以上も出た。大型台風が何度も上陸した1昨年、渇水の昨年と続いて、地球の気候変動の影響で毎年のように災害が続く。羽田→長野新幹線経由の旅に心配した雪の影響はなく予定どおりに日程をこなすことができた。この日の長野市の最低気温はマイナス13度。
市町村合併
視察の目的のひとつは市町村合併への取り組み。国の借金が700兆円を超え(しかもその25%が小泉政権になってからという)、国から地方への「地方交付税」減らしのための市町村合併政策。大義名分は「地方分権」なのだが、地方自治体が本当に力をつけるためには「特例債だよりの合併」にすがるのではダメ、また行政を効率化するだけでもダメだ。効率化は確かに「親方日の丸」で税金の無駄使いをしてきた役所に必要なことだけれど、地方が自律するためには「自治」の復活が大切だ。
長野県では合併を誘導するのでなく、合併するかしないかを町村が自発的に決定できることが大切として、合併しない、またはできない町村を支援している。昨10月に四国自治体フォーラムでの長野県の市町村課長は「長野では住民の要望に対して「予算がないのでできません」とは決して言いません。人件費こそ最大の予算。難しいと思っても職員が動くことで何とか活路を見いだすのです。」
ゼロ予算
長野県では、「ゼロ予算」と言われる事業があるという。1人の職員が一定の給与でABCDの4つの事業を行っているとしよう。そこでこの職員は4つの事業をこなしながらもそれらを効率化することにより新たな時間を捻出し、決まった時間内で新しいもうひとつの事業Eをやる。
58人の県議会議員のうち知事与党が10人前後という県議会で、予算が否決されることも日常茶飯事の長野県。ある時、安曇野の土手を7キロメートルのサイクリングロードとして整備するという1,000万円の予算が否決されたそうだ。そこで現地の土木部長「昔はこんな事業は自分たちでやったものだ。」ゼロ予算とは言っても道路整備というハード事業、路盤をつくる材料はアスファルトでなく不要な間伐材と河川の土砂で賄い、土木事務所の課長以上の幹部職員が汗を流して立ち上がった。その姿に感化された職員たちが手伝って、それを見ていた地元住民が200人もボランティア参加して1年で1キロメートルの道路ができあがったという。地域の人々にとっても特別な思い入れのある道路ができあがるのだ。
田中知事の改革はいろいろとすばらしいけれど一番の目玉は職員の意識改革なのだと思った。この日私たちに話をしてくれた市町村課や保健福祉の担当の職員も、仕事に誇りを持ち実にいきいきとしていた。
田中康夫知事に会う
長野行きに当たりあらかじめ連絡を取っていた無所属県議の北山早苗さんが「副知事に会われますか?」と前日に電話をくれた。彼女は私たちと同じ03年の統一選で初当選したCG(コンピュータ・グラフィックス)作家の県議で、2年前、長野で市民運動のリーダーの紹介で知り合った。私利私欲、政治家としての保身や出世への野望がないというか、政治に対する彼女の無邪気さ(真剣なのだけれど)は、恐いもの知らずの主婦がいきなり県議になった私や豊岡さんとよく似た「匂い」がする。
なんと長野では、田中康夫知事になってから4年も県議会の反対で副知事が決まらず、この9月になってやっと任命されたというのだ。それでは担当課の説明後に副知事の予定が空いていたら是非お会いしよう、ということになった。そして結局この日、副知事は庁外に出張で会えず、その代わりに田中康夫知事に会えた!徳島では知事に会って話を聞いてもらいたい住民の願いが叶うことはとてもとても難しいのだが、長野では1階のガラス張りの知事室に行けば、運が良ければ誰でも知事に会えるという。
この日、雪で孤立した栄村に自衛隊が入るということでちょうど分隊長が知事室に来られた。私は軍縮派だけれど、自衛隊が災害救助隊となって活躍することに大いに賛成。隊長さんは体育会系らしく、とてもすがすがしい男前であった。彼が帰ったあとも田中知事は何だかご機嫌でほとんど1人で1時間近くしゃべり続けた。語彙が豊富なのは言うまでもないが、豊かで特異な感性にあふれ、天才なのだと改めて感心した。
しかし、知事の支持率はこのところ30%ととても低いそうだ。県政記者クラブを廃止、長野オリンピックや新幹線建設に絡んでの地元新聞社と地元銀行の黒い疑惑究明に公約の調査委員会が焼却されたとされた証拠帳簿を発見し究明中、などの因縁か、長野県で圧倒的シェアを占める地元紙が長野改革の成果をほとんど報道していないと言う。(この点、記者クラブととっても仲の良い徳島県知事はうまくやっているといえる。)
長野県は47都道府県中唯一プライマリーバランスが5年連続の黒字(借金を除いた収入で、借金返済を除いた支出が賄われていること)、脱ダム、森林政策、入札制度改革など本当の改革を行っており、豊岡さん曰く、「まさに泥(暗黒の政治)の中に咲いた花」。この改革を継続してほしい。知事選挙は8月。
|