1月24日
中村敦夫さん出版記念講演〜環境主義の原点〜
前参議院議員で俳優(木枯らし紋次郎)の中村敦夫さんが、春の統一地方選挙の応援を兼ねて、環境ミステリー小説「ゴミを喰う男」の出版記念講演に来徳。中村さんは6年間の参議院議員の時代に、90名の国会議員による超党派の議員連盟「公共事業チェック・議員の会」の会長として、また環境委員、農水委員として、不正腐敗の追及や環境問題、農林水産業の復権などに取り組み、各地の住民運動と連携して活動。吉野川第十堰の運動にも大いに応援をいただいたものだ。
3年前の参院選では10名の比例代表候補者とともに日本初の環境政党「みどりの会議」の議席獲得をかけて戦い(徳島でも元木頭村長:藤田恵さんを擁立)、90万票を獲得したが議席を得られず政界を引退。現在は俳優業に復帰し、著述、講演を続けながら、念願の仏教の研究に励んでいるという。
この日は、尊敬する中村さんのイベントの「司会を」と声をかけて頂き、選挙準備で忙しい中ではあるが、自分を元気にするためにも「是非お手伝いがしたい!」と開始直前に引き受けたのだった。
4つの壁
敦夫さん曰く、「現代社会は4つの壁に阻まれて、閉塞感、イライラがつのり、変なヤツがはっきりものを言って社会の基準がわからなくなり、身動きができない状態になっている」。
第1の壁)戦争の予感
500年前から資源の取り合いが続き、国外の格差、国内の格差ともに広がり、これではテロや犯罪が多発するのは当然である。
第2の壁)環境の壁
2003年に世界の食料の需要は供給をオーバーした。地球温暖化により海に沈む国々、農業は壊滅的打撃を受け、日本も安全ではない。ゴミ問題然り。
第3の壁)経済の壁
お金とは本来、労働の報酬や作ったモノの代償だったはずが、今や、地球上の存在するモノの50倍もの金が「投資」というマネーゲームによって取引され、ホリエモンのような「ばくち打ち」が幅を利かせる。真面目に働いている者は浮かばれない。
第4の壁)人間性の壁
「人間」とは「人の間」と書く。もともと「空」の状態で生まれた人が、他の人々とのさまざまな関係によって「人間」になっていく。例えば私なら「議員」というのは「吉野川市の有権者と吉田ます子の関係」であり娘や息子との関係により私は「母」であり、夫との関係により私は「妻」である。そういうさまざまな関係が「私」という人間をつくっている。今、人との関係が希薄になり自分が何者かわからなくなってきていて、人々はidentityを喪失しつつある。
無限の経済成長ってアリ?
これら4つの壁を作っている原因は「無限の経済成長を追い求めること」。そもそも地球という有限の資源の中で、成長し続ける経済など非科学的だ。現代は「競争社会」という神様に支配されていて、これは「狂気の宗教」であり、今やもう限界状態である。そこで、全く逆の価値観である「ゆっくり、ちいさく、簡素に」 slow small simple を提唱する。 (これは3年前の参院選で打ち立てた「みどりの会議」の理念であり、今も変わらない私の政治ポリシーでもある。)
仏教の知恵
これらに対し、仏教がたくさんの知恵を持っている。仏教にはさまざまな宗派があるがその共通理念は「煩悩を捨てる」「小欲知足」「無情(物事は絶えず変化する)」「縁起」「輪廻転生」「解脱・涅槃」など。仏教以前のバラモン教は、土着で力強く、動物の直感のような宗教であり、「神」が全ての上にあるのでなく「神」「人間」「自然」の曼陀羅の中心に「悟り」があるような感じ。
般若院の宮崎和尚(敦夫さんの仏教の師匠)の話では、「釈迦」というのは一人の人ではなく、正しくは「釈迦族」のこと。自然とともに暮らしていた土着の人々が釈迦族。彼らは文明の中に生きなければならなくなった時、都市の中で失われていく「自由な心」を取りもどすため自分たちのことは自分たちで決める「自治の場:サンガ(=お寺)」を作ろうと呼びかけた。
本来、「出家」というのは妻子を捨てることでなく、「国」を捨てて「地方自治の場:サンガ」をつくることを言ったのだそうだ。これが仏教の始まり。現代の傷ついた子どもたちに心を痛める「夜回り先生」水谷修さんも、その著書の中で「仏教」に光を求めようとされている。
敦夫さんは今後、同志社大学で「slow small simple」の学問を体系づけられる予定という。私も自分の選挙が近づいており、「落ちればただの人になるのだから。」と励ましのつもりで言って下さる方もいるのだが、政治家でなくてもできることはたくさんあるし、むしろその方が大きな力を発揮する人も多いのではないだろうか。今後も中村さんの活躍に期待し、私も頑張ろうと思う。
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