2月15日
「21世紀の日本の森林林業をどう再構築するか」
演題に惹かれ、県立農林水産総合技術センター主催の林業講演会に出かけた。
講師は富士通総研経済研究所の主任研究員、梶山恵司さん。ドイツへの留学・勤務の経験豊富な方で、ドイツと日本の林業を比較し、期待以上に示唆に富んだ話を聞くことができた。
ドイツの森林面積は日本とほぼ同じ約1000万haだが、生産量は約4000万m3で日本の4倍、国内の使用木材の90%以上を自給しているという。10年ごとの伐採計画をきちんと立て、成長量の7〜8割を伐採することに決めて安定供給による価格安定を達成しているらしい。(日本では成長量さえ把握していないらしい。)木材価格は日本円にして約1万円/m3。
林業の話になると私たちは「昔は3〜4万円/m3もした木材価格が安い外材が入ってくるようになって1〜2万円/m3にまで値下がりし、コストを回収できないらしい。その上値段の競争に勝てず需要も減って悪循環。このままでは林業後継者も育たず、林業の先行きは暗い。」ということになって「とにかく何とかしなければ」「もっと補助金等で支えよう」「公共事業で間伐推進だ」「間伐推進しているはずなのに、成果が見えない」「何故だろう」というところで行き詰まっていた。
梶山さんは価格が1万円/m3でもコストを減らす努力をすればやっていける、と言う。流通の合理化や皆伐頻度を減らしたり路網(林道)整備をすすめたり、需要拡大の努力も日本はまだまだ、まだまだ足りないとか。その前提として森林の小規模所有者のとりまとめが必要で、それを担うべき森林組合が経営感覚ゼロであることが多く、所有者を説得するための努力も足りないという。
たとえば説得するのに森林管理のための見積りさえ出さず、見積りなしで説得できるはずもない。「林業をダメにしているのは公共事業、補助金を蝕む森林組合だ」と言いきっている。もちろん森林組合の全部がだめだというのでなく、岐阜県東白川森林組合、加子母村森林組合、京都府日吉町森林組合、高知県香美森林組合など努力しているところの事例も紹介。
このうち日吉町では「間伐しましょう!」と、森林所有者への呼びかけも初めはうまくいかなかったが、そこで何故うまくいかないのかを考え、林分調査をきちんとして補助金による収入や経費などの見積もりをきちんと出して山の荒れた様子の写真や地図を見せて説得し続けたという。
その際、見積りには責任を持ち、信用を得るうちに説得の座談会はいつしか不要になり口コミで間伐が進んでいったようだ。
「森林組合の抜本的改革」が林業再生の第1歩!!と、梶山さんは力を込めた。
このような観点からパイロット事業的に「冨士森林再生プロジェクト」が始まっているという。専門家、企業、NPO、行政が協力してモデルを作り上げ、他の地域でも広げていこう!というものだ。森林組合を軸に所有者をとりまとめ、木材の安定供給、需要拡大、面的森林整備を拡大する。大いに期待したいし、県内でも、行政にやる気があり、ひとつの森林組合から初めればできることでないかと思う。幸い今日は県の職員も沢山参加していたし、明るい兆しが見えてくるかもしれない。
環境税導入の民意形成??
その後、林野庁より「環境税導入にご理解を」という趣旨の説明があった。
いよいよ明日、京都議定書が発効する。2008〜2012年までに二酸化炭素など温室効果ガス発生量を1990年レベルより6%減らす。できなければさらに30%のペナルティがつくということだ。
地球温暖化により私たちの環境は大きな影響を受ける。南極の氷が溶けるなどで海面下に沈む国や地域、気候変動により作物のできなくなる地域(日本も例外ではない)、洪水や台風など自然災害の多発も予想され、人類が英知を合わせて全力で取り組まなければならない大切な問題だ。発効は遅すぎるくらいだが、1歩前進ということで本当にめでたいことだ。
日本の削減計画によると、森林経営による二酸化炭素吸収量の確保として3.6%をあてにしているという。新規植林により吸収量が増えるのは容易に理解できるのだが、間伐などの手入れによっても吸収量が増すのだろうか?そういう研究があって、成果が立証されているのか興味津々で質問してみた。が、答えは「途上国など禿げ山になったところに植林すればカウントされる。ずっとまじめに森林を守ってきた日本でもカウントが認められるということで理解して下さい。」という、納得しがたい答え。心情はわかるが、ちゃんとした裏付けがないならズルしてることになるのではないか?
環境税の是非
環境を守ることに税金を使うのは当たり前だと思うし、もともといろいろな製品にその製品を作ることや使うことで生じる環境への影響に対する付加がついていないことがおかしいのかもしれない。国の財政は破綻しているのだから、支出を抑えるか税金を上げるかのどちらかが必要だ。でも、無駄な税金の使われ方をさて置いといて、新しい税金を導入することには、疑問を感じるし、国民も納得しないのではないか?この林野庁の人は、「環境税が6000億円集まり、間伐の補助金となり、森林関係者のみなさんの得になりますよ。だからご理解下さいね。」というようなことを言っていた。先の梶山さんの講演で「補助金に頼ることが森林組合の自助努力を妨げ、林業の復活を妨げる」と言ってたことと矛盾する内容だ。
座談会
その後、梶山さんともう少し話したいと希望者だけが残り、行政、企業など林業関係者が熱心に質問や意見を述べる機会があった。ドイツの事例などをもっとみんなで勉強して対策を立てよう、ということになり、沢山の人が熱心に議論し「希望が持てるな」と感じた。
「環境税の導入で間伐補助金が増えれば、日本林業は完全につぶされます!」と梶山さんが静かに吠えた。「甘えないで自立しなければダメなんだよ。」というドイツ社会を見てきた心からの叫びだったように思う。
「努力してうまく営業している林業家もいるけれどそれは点でしかない。点は点にしかならないので、やはり森林組合が頑張るしかない。」ということだったが、頑張っている林業家のネットワーク化の可能性もある。それをやるコーディネーターを行政に担ってほしいし、森林組合の頑張りとの相乗効果で林業の未来は拓けるのかもしれない。
講演だけ聴くつもりで参加したが、熱心な参加者の声を最後まで聞きたくて晩ごはんの支度に支障がでる時間まで長居してしまった。明日へのヒントを沢山もらえたし、空腹の娘も夫もご機嫌悪くなかったし、めでたし、めでたし。
ちなみにわが家の車はハイブリット、電気はソーラ−発電、お風呂はソーラーシステムを採用、クーラーはナシ、暖房には間伐材による薪ストーブを使用して温暖化対策に貢献している。のだが、薪ストーブになかなか火をつけられない不器用な私である・・・。
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