11月4〜5日
高知県十和村〜荒廃ヒノキ林の表層崩壊の研究現場へ〜
大手新聞社の論説委員Nさんからの有り難いお誘いで、緑のダムの最先端の研究「恩田プロジェクト」の現場を見るために、急遽時間をやりくりして高知県四万十川上流の十和村へ。
同僚議員の豊岡和美さんと3人、筑波大の学生さんが合宿自炊しているという「四万十の道」へ。途中「土佐の一本釣り」で有名な久礼漁港にある商店街でおいしそうな鮮魚、野菜を買い込む。「四万十の道」は、もともとJAが経営していたが、統廃合により経営できなくなり使っていなかったところを安く借り受けることになったそうだ。
すっかり日が短くなった11月、待ち合わせした吉野川オアシスから約3時間、十和村に着いたときにはすっかり日が暮れていた。宿舎には筑波大助教授でプロジェクトのリーダー恩田裕一先生とインドネシアの留学生ルキさん、砂防の専門家水垣さん、浅井さんら4名の大学院生、一番若い脇山さんは来年4月に正式院生となり今はまだ九大農学部4年生で私の後輩だ。
この日は料理の達人豊岡さんによる包丁さばき鮮やかに、鰹のたたき、キビナゴの刺身、恩田先生お得意の特製お好み焼きも加わっての楽しい学習会兼夕食会となった。
恩田プロジェクトとは
私たちが政治テーマとして取り組んでいる「ダムのみに頼らない流域の総合的な治水」を大きく担うであろう森林について、全国的に「森林荒廃が洪水や河川流出に及ぼす影響」を数値化している研究はとても少ない。ビジョン21委員会が吉野川流域で取り組んだ研究は画期的だが、全国的にはまだまだこういった研究は進んでいないようだ。
林業の低迷で、間伐期を迎えた多くの人工林が放置されている現状で、地球温暖化等の影響による台風の大型化や集中豪雨による土石流の発生の危険性が増している今日、これらの研究の重要性は大きい。全国5カ所(長野、三重、愛知、東京、高知)の流域でさまざまなスケールで洪水流出や水質の観測を行い、人工林の荒廃が水循環、洪水発生、水質など下流域の河川環境に与える影響を予測するというのが恩田プロジェクトのねらいだ。
セシウム濃度を測る?
この実験では、洪水によって流出した土砂が、表面のものなのか、流出する水が山の斜面の内部まで浸透したものなのか、それとも表層を流れたものなのかを判断するための水質検査の項目として放射性同位元素のセシウム137濃度を測るのだそうだ。というのは、31年前のインド核実験の放射能が、まだ日本の国土にたくさん残っていて、表面のものであればセシウム濃度が高い、というわけだ。核実験の落とし子のような元素がこんな目的で利用されているとは驚きだ。一度汚染された環境はなかなか元に戻らないし、目に見えないところに汚染は確実にたくさん残っているのだ・・・。
荒れたヒノキ林の表層には不透水膜が
実験はまだ中途段階だが、手入れのされていないヒノキ林の表層は、根っこが現れて痛々しく土はぼろぼろ状態。今年、流域に100mmの雨が降ったとき、50cm×2メートルの表層を流れた水の量を測ると、手入れの悪いヒノキ帯では広葉樹林帯の7倍という結果だった。
恩田プロジェクトはNHKでも大きく特集され、ヒノキ林に降った水滴は一度葉っぱに当たって地面に落ちるときには相当大きくなり表層にダメージを与え、表層には「クラスト」と呼ばれる厚さ0.2mmの不透膜が出来ることが確認されている。雨はクラストから浸透せずそのまま表層を流れるというわけだ。ヒノキ林の早急な間伐が必要である。
山登りはとってもきつかったが、貴重な研究現場に立ち会えてとても有り難くワクワクした。それに加えて、高知にはいたるところに産直市があり、おいしいものが安く売っていて幸せな気分になれることといったら!徳島も食材は豊富なはずなのにまだまだ高知に負けてる気がした。元気な田舎へのヒントが得られた視察でもあった。
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