4月29日
講演会「私はなぜ憲法9条を支持するのか」
「自民党をぶっ壊す!」と言って、国民の圧倒的支持率を得ていた小泉政権が誕生して3年、国旗・国歌法案、住民基本台帳法、盗聴法、イラク特措法等数々の日本が右傾化されていくような法案が次々と(しかもあっさりと)国会を通過している。
最近行われた衆議院補欠選挙の投票率の低さ、そして何よりイラク人質事件の被害者5人に対する政府関係者のみならず一部マスコミ、一般国民からのパッシングにやりきれない思いを抱いているのは私だけではないだろう。
それでもこれまで何とか徳島だけはと、誇りを持っていたのだが、今回の徳島市長選挙での姫野さんの落選でなんだか暗くなってしまっている。
私の周りにも、イラク人質事件の5人に対する一部の国民の反応(首相に煽られた自己責任論者たち)に、失望し鬱状態になってしまった友人がいる。優しさゆえの傷つきやすさだ。
彼が少し元気になったという5人を励ますWeb(イラクで人質になった方々への敬意表明と激励の緊急アピール)を覗いてみた。
今回のことで傷ついたのは彼だけではなく「5人への日本国民のパッシングは私がこれまで生きてきた30年間で最もショックなことでした。自分の住む日本という国の人たちはこんな体質だったんだということに打ちのめされています。」という30歳の女性の声もあった。
そんな今日、県内の3つの平和団体の共催で、最近翻訳されて話題を呼んでいるというフランスの寓話「茶色の朝」の解説者で東大大学院の高橋哲哉教授の講演会が開催された。
靖国参拝は戦争準備?
1万円札の「福沢諭吉」が、日清戦争後の1895年11月、時事新報の記者時代に「戦死者の大祭典を開催すべし!」という論説を書いているそうだ。
それによると「凱旋兵士は大変な名誉に包まれているのに、戦死者や遺族に世間や政府は冷たい。これでは次の戦争ができなくなる」「戦死者が護国の戦場に倒るるを幸福と感じられるように、東京に遺族を集めて天皇自らが出席して盛大にやるべき」と。絶句・・・。
その一ヶ月後の12月に明治天皇は靖国で祭典を行っているそうだ。
これに出席した老人で、一人息子を失い泣いてばかりいた人が「一子を失うも憂うに足らず」と帰っていったとか。
福沢さん、「天は人の上に人をつくらず…」と言って慶應義塾を開設した偉い人だと思っていていたけれど…。
先に自衛隊が横須賀港から出港する際には何と軍艦マーチが流され、ある衆院議員が「興国の興廃この一戦にあり」という日露戦争時に東郷源八郎総裁の言葉を用いた。
一部のメディアで小さく報道されただけだったとか。日露戦争100周年の今日、民主党議員も明治神宮を参拝し「日露戦争に学ぶ会」なる会が発足、何だか戦前にタイムスリットしたような信じられないことが現実になりつつある。
自衛隊イラク派兵が閣議決定されたときの首相の言葉「日本国民の精神が試されている。」これは「国策のために自らを犠牲にすることができるか」という意味だと高橋氏。
イラクで二人の外交官が殺された時の首相コメントは「二人は家族、国民の誇りである。二人の遺志を継いで、イラク復興をやる。」これだけを聞けばもっともなように聞こえる。が、靖国の論理の中に国民を誘いこんでいるのである。そして恐いことにかなりの人々がこの首相のことばに共感している。
教育基本法は憲法と同様の重大性を持っているのだ!!
憲法の前文や9条はこの数年また注目されつつあるが、「教育基本法」の方はあまり知られていない。私も初めてじっくり読んでみた。憲法にある「個人の尊厳」や「平和」の理念がしっかりと書いてあって、いわば平和憲法を具体化するための教育は憲法の手足のようなものだと高橋先生。
「戦争が出来る国づくりのための法律を整備するだけでは戦争は出来ない、それを担う国民の『心』が求められている」ということで教育基本法の改正や、道徳の副教材『心のノート』の全小中学生への配布があるようだ。
日本中の子どもたちが一斉に一つの副読本で、つまり一つの価値観によってつくられた準教科書で、同じ「心の教育」をされるとは、最も恐ろしいことではないのだろうか?
教育基本法の改正を言いだしたのは中曽根内閣の頃で、その頃多くの日本人はバブルの恩恵を享受するまっただ中で、ピンと来ていなかったようだ。その後の景気の低迷、地下鉄サリン事件や北朝鮮拉致の問題などで、国民が「強い国家」というものを求めるようになってきているという分析もある。
私たちに出来ることは?
「ウルトラCの回答はない」と高橋先生は言う。一人一人が考えることを放棄しないこと。自分の意志を表現すること。そう、表現の自由もそのうちなくなるかもしれないのだ。
高橋先生が解説を引き受けられている「茶色の朝」が注目を集めているようだ。2002年のフランス大統領選の決選投票に極右政党の党首が残ってしまった時にフランス国民のベストセラーになった寓話だという。
「少しずつ変わっていく国の法律にちょっぴり違和感を感じながらも日々の暮らしに追われ「まあ、いいか」と思っているうちに取り返しのつかないことになる」という話。
まさに今の日本そのものかもしれない。10分で読める短編、そして一日中考えさせられる。あなたも是非読んで下さい。
そして身近な人に話をしてみて下さい。
私も微力ながらGWはビラのポスティングに励むことにします。
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