9月7日
下水道はどうなっているのか
「徳島県は下水道普及率が和歌山県に抜かれて全国最下位」というのがニュースになった。
「社会資本整備が遅れているから急がなければ」というところだろう。
しかし、下水道普及率と河川の汚れの関係は少し変なのだ。
たとえば、普及率の高い東京、神奈川、大阪などの川はすごく汚れていて、徳島、和歌山、岡山などの川はきれい。
徳島県内でも50市町村で最も下水道普及率の低い木屋平村を流れる穴吹川はなんと四国一の水質だ。
発生源処理と集合処理
下水道5カ年計画が初めて出来たのは1963年(東京五輪の前年)、
当時は第3期計画終了ぐらいで(つまり約15年)全国を網羅する予定だったらしい。
ところが40年たった今でも普及率は7割台。
人口10万人以上の地方都市、大都市ではほぼ整ってきた。
人口1万人前後の小さな町でも国の補助金が3分の一、残りの地方債発行分も6割以上地方交付税で返ってくるということで、下水道事業に着工しているところは多い。
ところが、単位面積あたりの水の使用量(水量密度という)が少ないと(つまり人口密度が少ない)
下水道料金がかかった工事費や維持費に対して回収できず、
下水道財政の赤字が自治体の財政を大きく圧迫している。
総務省も、「汚水処理計画を立てる際には集合処理(公共下水道や流域下水道、農村集落排水)と個別処理(合併浄化槽)と、どちらがその地域にとって有利なのか、住民の意見もよく聞いて決めるように」ということを各自治体に通達している。
この日、講師の加藤英一さんは各家々や事業所で処理をする「個別処理」のことを「発生源処理」という言い方をされていた。わかりやすい、いい呼び方だと思う。
マニュアル
「どちらが有利なのか」を決定するに当たって、3つの要素がある。
- 性能
水処理の能力については、どの方法も高度処理が出来るようになっていて、大差はない。
窒素やリンを除去できる合併浄化槽も出ているとのこと。
ただ建設にあったて、集合処理(公共下水道、流域下水道)は10年以上必要なのに対し、発生源処理(個別合併処理浄化槽)なら1週間以内に設置可能。
- 経済性
建設費は、集合処理は発生源処理の5〜10倍かかる。
維持管理費は発生源処理がやや高め。
ただし、自治体が一括して管理するなどの工夫を行えば、発生源処理でもかなり安くできる。香川県仲南町、旧寒川町はそのいい例。
はっきりと比較するために各都道府県には「策定マニュアル」なるものが存在する。
それには何やら難しそうな関数の式がたくさん記載されていて、
それぞれの市町村が汚水処理方法を選ぶ際にこのマニュアルで処理施設建設費、維持管理費などを比較できるようになっている。
ところが、この日の講師である加藤英一さんは「使ってはならない3省統一マニュアル」として
この式によって計算した維持管理費の値と中四国の可動済みの水処理実績値が2、3倍違っている、という指摘をされているではないか!
担当課にその旨を問うと、実績値と式による計算値はほぼ合致するという。
検証してみると、単位体積あたりの処理費を計算する際、
加藤さんは分母に有収水量(実際にお金が支払われる水の量)を使っているのに対して、
県は処理量(地下水などの不明水が相当入っている)を使っているためだ。ということがわかった。
見解の違いともいえるが、現実にいくらかかるかを求める際に
有収水量を用いるのが当たり前である。
- 緊急の場合
たとえば大規模地震などに対して、阪神大震災では合併浄化槽はほとんど壊れなかったという。
これから予想される南海大地震、個人の合併漕のよさがここでも発揮されることになるかもしれない。
おわりに
準備期間が短く、徹底した広報が出来なかったけれどこの日の参加者は約50名。(参加いただいた方、ありがとうございました。)
3時間の長時間に渡り、中身の濃い学習が出来た。
加藤英一さんは控えめで自然体の素敵な人で、年齢よりずいぶん若い。
各地のデータは全てインターネットで入手されているということだ。
長年この問題に取り組み続けておられ、徳島も何度も来られているようで、この日も会場の文化センターまで徳島駅から単身徒歩で来て下さった。
著書の「誰も知らない下水道」は、ロングセラーで下水道問題のバイブルだ。山川町図書館にも置いてあって(町長は知らないだろうな)、
私は何度も何度も借りて読んだ。
昨年町長選出馬に当たって、下水道問題は焦点だったし、思いきって購入した。(2500円です。)
著者にサインしてもらって大満足。(ミーハー?)
また、山田國広氏らと共著の「水の循環」はわかりやすく一気に読めるいい本です。
こちらは2200円。どちらも県民ネットの控え室に予備がありますので、ほしい方はメールにてお申し込み下さい。
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