10月28〜29日
ダムと天下り〜水源連総会と国会シンポジウム〜
ダム(堰を含む)問題と向き合っている全国の仲間たちが水源連というネットワークをつくっている。今年2月に国交省に公開質問状を提出、その回答に納得がいかず2回目の質問状を出した。(詳しい内容は水源開発問題全国連絡会のHPをどうぞ。)
それに対する国交省の回答を聞きつつ交渉すること、そして、最近再結成された超党派の国会議員連盟「公共事業チェックの会」(前代表:中村敦夫さん、現代表:鳩山由起夫さん)などのメンバーに対して、各地のダム問題を提起する国会シンポジウムが行われ、吉野川みんなの会の代表として豊岡和美さん、村上稔さんとともに3人で上京した。
総会には、北は北海道のサンルダムから西は熊本の川辺川ダムまで、ダム問題に取り組む12の市民グループからの報告があった。川辺川からは相良村の矢上村長も。夏の全国川シンポで参加者を大いに惹きつけた明るい矢上節は健在。
また、水源連のメンバーでこの夏の参院選で誕生した二人の国会議員、熊本選挙区の松野信夫さんと東京選挙区の大河原雅子さん(元東京都議で生活者ネット、生活者ネットは2期で任期を終えるとの規則がある)が出席されていた。松野さんは川辺川ダム利水裁判原告の副団長、大河原さんも八ツ場ダムの市民運動の中心メンバーであり、司会の元国会議員秘書で現在明治大大学院の田中信一郎さんは「すごいことですよね。吉野川で言えば、豊岡さんや吉田さんが国会議員に当選したようなものですからね。以前では考えられないようなことが起こってきていますよね。」と嬉しそうだ。
東京選挙区で市川房江さん以来の無所属当選を果たした川田龍平さんも姿を見せてくれた。最近の日経新聞第1面で、国内計画中のダム建設費が約2兆円と報じられた。利根川の支流吾妻川に建設予定の八つ場ダムの事業費は約6000億円、起債利息を含めると8900億円にもなるという。しかも、必要性の根拠になっている利水については、首都圏での水あまりの傾向に加えて、洪水調節にもほとんど役に立たない(国交省による1947年カスリーン台風の再来計算での治水効果はゼロ)というから、6都県民による住民訴訟が起こるのも無理はない
川の基本方針を決める検討小委員会のあり方
2日目の国交省との交渉には、公共事業チェックの鳩山由起夫さんら国会議員が同席。
国交省からは、河川計画課課長補佐、総務課の企画専門官、治水課課長補佐など6名が対応。吉野川や川辺川など国が管理する1級河川の今後100年のビジョン「基本方針」に、現堰の撤去やダムを是とする基本高水が盛り込まれたのだが、その決定の場は国交省河川分科会の検討小委員会だ。(過去の県議会日誌参照)
ここで注目すべきは、平成7年の政府閣議決定「審議会等の透明化、見直し等について」に「当該省庁の出身者または現在当該省庁の顧問、参与等の職にある者は、原則としてその委員に任命しない。やむをえない場合でも、特別な事由のない限り審議会の会長等に任命または選任しない」とあること。しかし、吉野川などの基本方針を検討した会の委員長は旧建設省の河川局長という。水源連がこのことを追及したが、官僚の答弁は「河川小委員会は審議会等に当たらない」というもの。下部組織とはいえ内容についての実際の審議がなされた唯一の組織であるにもかかわらず、ひどい話だ。
かわいい小さなダムバスター
この時、ダム問題に詳しいジャンーナリスト、まさのあつこさんが、前日の国会の総務委員会を傍聴し、総務大臣が「審議会の下部機関も審議会等に含まれる」と答弁していたことを指摘。(閣議決定の主旨からして当たり前だ。)官僚たちは前日の委員会を「聞いていない」とごまかしていたが内心慌てたに違いない。
さすがまさのさん!彼女は「情報公開された審議会等の議事録に委員の実名が入らないのはおかしい」と、現在裁判で係争中。(失礼ながら、まさのさんは裁判の原告として頑張っているようにはちょっと見えない、ごく普通のかわいらしい少女のような女性です。)これに対しては官僚たちは「実名を公表することで委員の自由な発言を妨げてはならない」と発言。実名で堂々と自由な発現のできない人を委員にすること自体がおかしい話ではないか。この問題は保留になったが、是非オトシマエをつけてもらわなければならない、大事なことである。
おりしもこの原稿を打っている11月下旬、「フライデー」の最新号(12月7日号)で、「八つ場ダムの工事を落札している37社の企業に国土交通省職員が52人、7つの公益法人を含めると77人が天下っていた」と掲載された。ダム問題に政官業の癒着あり!の構図だ。まさのさんの調査によると例の委員長の天下り会社も、委託契約で数千万円の国交省の仕事を請け負っているという。
財源不足から消費税増税が取りざたされようとしている今日、許されるべきことではない。血税は必要なことに使われるべきという問題だけでなく、ダムにより破壊される環境、そのことがヒトを含む生態系に与える悪影響は、この先(考え難いことだが)どんなに豊かな財政が戻ってきたとしても、お金では取り戻すことはできないのだから。
生き方の選択
吉野川みんなの会からは豊岡さんが現状報告、私はパワーポイントの原稿を担当し、夏の全国川シンポの報告と不意の質問に答えられるように村上さんが待機した。事前のメールのやり取りをした水源連の事務局長の遠藤さんとはこの日が初対面。遠藤さんは代表の島津さんとともに60代、ボランティアで会を引っ張られている。温厚で柔和な面差しのお二人ではあるが、国交省へ厳しい質問の矢を浴びせる姿が印象的だった。
遠藤さんは、公務員を定年退職された際、第2の勤め先を探すより、水源連に専念される道を選ばれたという。手弁当のボランティアで相当の時間も取られ、経費の持ち出しも結構きついようだが「孫や子どもたちの世代のために、残された生涯をダム問題に」との決断をされたことを懇親会では直接伺えて胸が熱くなった。目立たない、けれど志篤く温かな多くの人たちにより、未来が少しづつでも開かれていくことを信じたい。
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