9月24日
ゼロ・ウェイスト宣言の町
〜上勝町 東さんのお話を鷲敷にて〜
9月19日の朝、何かと暗いニュースが多い昨今、久しぶりに嬉しく、感動的なニュースが徳島新聞のトップを飾った。
その日の上勝町議会で、2020年までに消却や埋め立て処分が必要なゴミの排出をゼロにする「上勝町ゼロ・ウェイスト宣言」がなされた。
達成期限付きのごみゼロ宣言は全国初だそうだ。
上勝町は徳島の3大河川の一つ、勝浦川の上流の小さな山あいの町(人口2232人)だ。
ゴミの34分別や「彩り」という和風料理に付いている「葉っぱ」の会社で有名。
高齢化率44%という中で、とても元気な町だ。
その上勝町のゴミ問題を中心に担ってきた人物の一人である町職員の東さんが、鷲敷町で講演をされるということを聞き、山川の仲間たち(かしましおばさん4人組と男性若手ホープのひとりKさん)とピクニック気分で遠出することになった。(往復所要時間4時間)
会場は約60席がほぼ満席で、中学生の参加も多かったようだ。
上勝町がこんなすばらしいゴミ対策をする町になった要因はいろいろある。
一つには山田〜笠松町長と2代に渡る首長さんの姿勢。
次に高齢化率40%以上という地域性の中で、元気な住民たちの存在。
そして町長を支える職員の熱意。
山川町では、可燃ゴミ(川島町で消却して灰は埋め立て)
埋め立てゴミ(そのまま埋め立て)
リサイクル:ビン、カン、ペットボトル、古新聞、古雑誌、段ボール
その他(大型ゴミ、乾電池(北海道の処理業者へ))
と、分別は10種類。
食品トレ−と牛乳パックはスーパー持ち込めばあわせて12品目だ。
数年前にビンの選別場がKさんの自宅近くに出来たとき
「ビンは家で各自が分別すれば分別処理場をつくる経費が節約できるのではないか」というKさんに、
山内町長(現職)が「山川の町民に(ビンの色で)分別は無理です。」
と答えたという。
この日の東さんの言葉「行政の最大の仕事は住民の意識づくり」はその対極の考え方だ。
お年寄りが多く、町に一つしかないゴミステーションへのゴミの持ち込みが難しい所帯へ、中山たよこさんらが「利再来(りさいくる)上勝」というボランティアグループを結成し、ゴミの収集に行く。
この際、地域通過を導入してはどうかとの案に「私たちがしてきたことはあの世に行ったらちゃんと閻魔さん(お釈迦さん?)が評価してくれるから、ややこしいことはせんでいい」という答えが返ってきたそうだ。
(あっぱれオバアたち!)
調査によると家庭ゴミの32.4%が生ごみ、
約870全所帯に生ゴミ処理機がある。
「処理機は電気を消費するという点についてどう考えるのか?」
との質問には
「何かを始めるにあたって必ずデメリットが生じるけれども全部の信号が青になるのを待って渡ろうと思ったらなかなか前へ進めない。
一歩ずつでも前進したい。
エネルギーについては、近く“自然エネルギーを作る会”が発足する予定。」
とデメリットをメリットに変えていこうと本当に元気だ。
34分別でどうしても焼却しなければならないゴミは年間48トン。
小松島市の半日の量だそうだ。
(人口が約20分の一に対してゴミは730分の一)
ゴミの市町村管轄は一般廃棄物、県は産業廃棄物。
日本では産廃が一廃の約8倍の量が生じているので、市町村自治体がいくら頑張ってゴミをゼロにしてもそれは9分の1を減らしたに過ぎない。
だから、抜本的なゴミ問題解決にあたっては国の方向転換が不可欠だ。
「ゴミ問題は個人の意識の問題。ゴミを出さないように心がけましょう。」などという行政のパンフレットを見るととてもとても腹が立ってくる。
フツウに生活しているだけでゴミが出てしまうというシステムをなかなか変えようとしないくせに、個人の倫理レベルに解決の責任を転嫁しているのだから。
だからといって政治家や行政任せにしていては、
自然環境が取り返しのつかないところまで来ている。
上勝町のゴミゼロ宣言は、私たち大人の世代が子どもたちに安心して暮らせる環境を残すための、ある意味で当然の宣言だ。
でもその当然のことを全国どこも出来ないでいるという現実。
ガス化溶融炉などによる高温焼却を京都議定書に反するものとして捉え、
空港埋め立て地に出来る最終処分場も平成28年度で満杯になるということから、それ以降のゴミ処理のことを憂いての宣言である。
目先の利益のことしか考えられないリーダーだらけの世の中で、
「上勝町ごみゼロ宣言及び行動宣言」を改めて読んでみると、
当たり前のことなのに妙に感動的で、思わず泣けてしまう。
この宣言が徳島県中の自治体に広がっていきますように。
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