9月30日
急な追加開催〜吉野川流域住民の意見を聞く会〜
わざとじゃないの?
上・中・下流域でそれぞれ3回開催される予定の「住民意見を聞く会」のそれぞれ1回目が終了した。下流域の徳島会場では100名以上の住民が参加したが意見を言えたのは12名。質問は一人2項目に限定され、国交省との議論も時間の関係で許されず、参加した住民は消化不良、欲求不満となった。
時間の制限をされて、意見を言うだけでは、「国交省のアリバイづくりではないか」ということで、会の運営を任されている「NPOコモンズ」は、国交省に追加開催が必要との意見書を8月16日に提出。それに対して国交省は9月13日付で追加開催を決定。この意見書と決定通知がHPに同時にアップされたのは9月19日。翌20日、10日後の9月30日に追加開催ということが発表された。その日はこの16年間にわたり可動堰問題に疑問を投げかけてきた市民団体の代表格「吉野川シンポジウム(代表:姫野雅義さん)」の年最大イベントのひとつ「吉野川まる遊び」の日ではないか!数ヶ月かけて準備し、県外からも多くのファンが訪れる恒例の行事なのだ。
当然ながら意見を言いたい多くのスタッフは参加できない。周知期間はたったの10日間で、しかもチラシも何もナシ、前回参加した109名にも事前の連絡はナシ、新聞に小さな記事が載っただけで、はたして人が集まるのか心配した。しかも場所はわかりにくい徳島大学工学部の構内という。
会場はいっぱい
ところが、5分遅刻(構内で迷った)して到着した会場は住民でいっぱい!徳島人にとって大事な吉野川への関心は高いのだ。住民投票で活躍した懐かしい人たちの顔もチラホラ。地元情報誌の元社長で、第十堰住民投票の会代表世話人の住友氏も久しぶりに来ていて、一番前に座っている。
この日は国交省の素案の説明は1時間ほどで簡単に行われ、予定時間(13〜16時)の残り2時間はすべて意見を言える時間になるらしい。私が参加した過去3回の会では、住民が挙手をして意見や提案や質問を2,3項目づつ、それに対して国交省がその場で答えたり、持ち帰ったり、答えても答えになっていなかったり、という感じのやり取りで時間切れ、というものだった。
しかし、この日は「すべての人の意見を聞いたぞ」としたかったのか、一人5枚のポストイットが配られ(縦横それぞれ5×20cmほどの黄色い用紙)、それに自分の意見を書いて前にあるホワイトボードに貼り付けていく、というやり方だった。ホワイトボードは「治水」「利水」「環境」などに分類されている。なるほど、参加型ワークショップでよく使われる手法だ。住民に共同作業をしたという満足感を与え、参加したという意識にさせるのだな。徳島の人は騙されないと思うけど。
7枚のボードのうち向かって右の2枚が
会のあり方やコモンズについての意見。
意見は200項目にもおよび、会のあり方への批判が続出!!
コモンズのメンバーが出された意見を分類している間に、司会者が「会のあり方について分類にもう少し時間がかかります。この間に、治水の方からカードを見てみましょうか」と進行の仕方を提案した。すると、すかさず住友氏より「会のあり方やコモンズの進行に対する意見が多いのだから、先にそれをやるべきでないの?」と、「さすが住友さん」と会場からも大きな拍手。(彼の処女作「あわわのあはは」のカバーには「平成の坂本竜馬」と褒めすぎの帯がついているのだが、この時ちょっとそのことを思い出した。)
会のあり方についての意見は200項目中、4分の1から3分の1くらいを占めているように見える。一方、「素案の中身について話し合う場と思って参加した。会のあり方は入り口論にすぎない、早くやって」という人もいる。「入り口が違ったら出口も大きく違う。」と言う人。すったもんだの末、「時間を延長してでもすべてやっていく、治水、利水、環境という順番で、会のあり方は最後」とコモンズが決めた。
公平性、中立性とは?
この日は予定時間を3時間も延長し、午後7時過ぎまで会議は続いた。100名以上いた参加者も終わったときには30名くらいになっていただろうか、最後の2時間は、会のあり方についての議論となった。
国交省や県はこの会のあり方を「住民意見を広く聞いて出来るものは計画に反映させる」「中立性を保つために会の進行はファシリテーターが行う」「出された意見はすべて公開する」と自慢げに繰り返すが、「計画に反映させるかどうかの決定の場は国交省内部であり非公開」「国交省に疑問を投げかけても、議論にはならず、満足な答えが返ってこない」「ファシリテーターの役割は単に会の進行だけで、会の運営方法を決める権利などは一切ない、国交省の言うとおりのことをするだけ」「進行の仕方を決定する権利はなく、意見書を出すことが出来るだけ」「ファシリテーターの中立性とは、当然、国交省と住民の間で中立なのかと思っていたがそうではなく、参加したすべての住民に対して中立という意味だった(!)」ということが、この2時間ではっきりした。
それならば、司会進行など誰がやっても同じではないか? 国交省がやっても同じ、いっそそのほうが、経費が節約できるのでは? と疑問に思ったのは私だけでなかったようで、「いったいいくらでこの仕事を引き受けているのだ?」と住友氏がずけずけと(失礼!これはとっても大事な問題)質問した。するとなんと、委託料ははっきり決まっていないという、あまりに杜撰な契約だったのだ。住友氏は後日、コモンズに以下のような質問状を送ったらしい。
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- コモンズの収支報告書を出して欲しい。
- 「意見を聴く会」をいくらで受託しているのか? これは費用対効果を検討したいためです。
- コモンズメンバーの現職業、及び経歴を教えて欲しい。その立場によって、彼等のいう「中立・公平」に影響を与えると考えるからです。
- 今後、この「意見を聴く会」をどう運営していくつもりなのか?
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進行役のコモンズメンバーの澤田さんは、ソフトな口調のとっても誠実そうな方で、この日もとても苦労して司会されていて、私のように同情してしまった人も少なくなかっただろう。しかし、全国的な河川行政の流れの中、吉野川での流域委員会のない、住民参加の後退したカタチでの「流域住民の意見を聞く会」で、お飾り的なファシリテーター役を引き受ける「それなりの覚悟」があったのかどうか。住友氏への回答と今後に期待したい。
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