4月11日
住民の願いむなしく〜公害調停制度の死んだ日?〜
468名の申請人により、違法な産廃の徹底調査と封じ込めを18の排出業者・個人に求めた徳島県初の公害調停。50人以上の立会い希望があるにも関わらず、10名しか入室を許さないという事務局(県)。再三にわたる要請に、やっと20名までの入室が許され、ただし10名は立ったまま。大きな部屋もあるのに、どうして?不安と期待を寄せながら第1回目の調停の日がやってきた。
この日は朝9時着の飛行機で代理人の村田正人弁護士が来徳、9時半から石川弁護士事務所で事前打ち合わせ、13時半より、出席したい申請人の事前集会、15時より、公害調停、17時より記者会見、午後6時その後の打ち合わせまで、一切を見守った。

公害調停の控室で
なんと、調停が始まってわずか約1時間半後には調停委員長からの一方的な打ち切り宣言!理由は、非申請人が誰も来ないから!来たくないのは人情、事務局が事務的に通知しただけだとしたら、来ないのが当たり前だ。何のための調停か?
「4月11日は、徳島県の公害調停制度の死んだ日、一生忘れません。」は八木代表の弁。今後、どうするのか?代表世話人らが申請人にあてた手紙、石川弁護士の調停委員会メモを以下に貼り付けます。

失望と怒りの記者会見
申請人のみなさまへ
とても残念なお知らせをしなければなりません。
調停打ち切り
私たちが昨年の総会から468人という沢山の申請人の声を届けよう! と取り組んだ公害調停。私たちが待ち望んだ徳島で始めての公害調停は、第1回で打ち切られました。
4月11日午後3時。「10人しか入れません」との制限を越えて、やっとのことで20人まで認めさせた申請人の目前で、4時30分、「これをもって審議打ち切り、調停を打ち切ります。」の調停委員長の一言であっという間に終わりを告げました。
理由
理由は、「被申請人18人(個人・団体)全員が誰一人として調停の席に姿を見せなかったから、調停のしようがない」というものでした。
調停委員長と弁護士の緊迫した応答。
- 《弁護士》
「出席するよう説得する努力したのですか? 県の事務局からも呼びかけたのですか、聞かせて下さい。出席しない理由教えて下さい。」
- 《申請人》
私たちからも質問が飛びます。
- 《弁護士》
「調停委員の任務放棄ではないですか?」 弁護士が強く抗議。
「相手方からどんな返事が、いつあったのですか? どんな風に出席を要請したのですか? その文書を見せて下さい。」
- 《調停委員長》
「プライバシーに関することなので開示は拒否します。」
- 《弁護士》
「見せられる所だけで結構ですから見せて下さい。相手の言い分が分かれば、対応の仕方を考慮できます。」
- 《調停委員長》
「その必要はありません」。
何を言っても、「それらは、ご意見として承っておきます!」。
挙句には「退席しましょう!!」。
機能していない徳島県での公害調停
これが知事から正式に任命を受けた調停委員の方々の姿です。
これでは公害紛争処理法が、まるで機能していません。機能させようとの意思がないと言わざるをえません。「あなた方には県民の声が聞こえないのですか!! 恥ずかしいと思わないのですか!!」 思わずの激しい言葉が、すべての人たちの思いを集めていました。
徳島での第1号公害調停は、こうして葬り去られました。
私たちはこの事態を決して許すことはできません。
石川弁護士さんの詳細な報告を同封していますので、お読みいただきご検討ください。
みなさまから今まで繰り返しカンパをいただき、2回のトレンチ調査と1カ所のボーリング調査、用水の水質、底土の検査をすることができました。
その結果、予測通り膨大な量の違法投棄が証明され、危険な高濃度の各種重金属、ダイオキシンなどの有害化学物質が検出されました。
そして468人もの多数の人々が一人あたり1,000円を拠出して、許可されていない有害、危険な産業廃棄物を埋めた個人と企業に対して、「現場の徹底調査と違法産廃の撤去」求める公害調停の申請人になられました。
468人もの人々が「子孫のために安全な環境を守らなければならない」ということで結集された意義は大きいものです。
私たちはあきらめません
今回、違法投棄をした相手側・被申請人が「公害審査会」に出てこないため調停が不成立に終わったからといって、このまま諦めて危険な現場を放置してしまうことはできません。
これから私たちは
私たちが今後出来ることは、いろいろと考えられると思います。
私たちの代理人になっていただいた弁護士さんの提言もお聴きして、皆で知恵を出し合いましょう。
なお4月29日午後2時よりの会に出席できない皆さまは、ご意見を「園瀬川流域環境保全の会」宛にくださるようお願いします。
2008年4月18日
代表世話人 八木正江、山川武子、山田節子、梯 和夫
八木(090-3989-8491 FAX 644-3178)
打ち切られた公害調停報告会
日時:2008年4月29日(火)祝日 午後2時〜4時
場所:しらさぎ台自治会集会所2階
ぜひ、お誘いあわせて、ご参加ください
「公害調停」報告
第1回公害調停が4月11日開かれました。
新聞やテレビでも報道されましたが、第1回だけで打ち切られました。
石川量堂弁護士による公害調停の顛末を報告いたします。
- 2008年4月11日(金)午後3時、:県庁10階中会議室にて調停が始まった。当初、調停室に入れる申請人は、代理人弁護士を含め10名と通告されていたが、度重なる申し入れの結果、最終的には30名近くの申請人が調停室に入った状態(ただし、多くは立った状態)で調停が開始された。
3人の調停委員や事務職員、申立人代理人らの簡単な自己紹介が行われた。
- 調停委員長の説明及び発言要旨は以下の3点だった。
(1) 調停を進める基本的な立場
公害調停は基本的には民事調停と同じであるが、公害紛争処理法によって行われる。
話し合いによる合意の見込みがある場合は調停を進めるが、一方が調停に応じない場合は調停の成立する見込みがないものとして調停を打ち切らざるを得ない。
現時点では、2月中旬に意向を聴取したのに対して、被申請人はいずれも調停に出頭する意思がないことを表明している。
(2) 被申請人らの主張について
本調停について被申請人らの意見を聴取した。文書に意見を記載して提出した被申請人もいる。しかし、被申請人らの意見等にはプライバシー、個人情報が多く含まれているので一切明らかにできない。
(3) 調停委員3人による5回の調停委員会を開いた。
調停委員指名後、第1回の調停までの間、今後の調停の進め方等を協議するため調停委員会を5回開いた。
- 村田弁護士は以下の3点を主張された。
(1) 被申請人の不出頭について
被申請人18名全員が不出頭というのは異常である。
不出頭に対する罰則はなくても、出席しなくてよいというものではない。確かに、公害を出した企業が公害調停に出たくないと考えるのはある意味で当然である。しかし、そのような企業に公害調停に出ない自由が安易に認められるなら、公害調停という制度の意味がなくなる。国の公害等調整委員会が公害調停を行う際は、担当事務職員は公害調停の意義・制度趣旨を直に被申請人に説明し出席を求め、調停が行われるよう努めるのが通常である。委員会はそのような努力をしたのか、したとは思えない。
(2) 被申請人の主張や見解が明らかにされないことについて
これまで、代理人として公害調停に出席したが、被申請人の主張に関する書面をもらえなかったことはない。
被申請人の主張が明らかになれば、申請人も調停を進める上で何が問題かを知ることができ、調停を進めやすい方向で対応を変えることも可能となる。
被申請人の主張の中に保護されるべきプライバシーや個人情報が含まれているというのであれば、それらが明らかにならない範囲で被申請人の見解を明らかにすることもできるはずであるのに、それをしようとしないのは理解できない。
(3) 申立から第1回の調停までに長時間を要したことについて
調停委員会は、申立後第1回の調停期日までに5回も会合を重ねているが、むしろ、早期に第1回の調停期日を決め、被申請人の出頭確保に努めるべきである。
- 申請人の発言
八木、山川、山田、梯の各代表がこもごも、公害調停に対してかける思いを語る。発言は時間的な制約の関係上各自2、3分であった。
- 中断
調停開始後約35分が経過。被申立人が出頭しないことを受けて、調停委員が協議するとのことであり、申請人らは退出して控室へ。
- 午後4時少し前に再開。申請人側より、調停委員に対して、映像による説明。
園瀬川流域保全の会が編集した公害調停申立に至る経緯について、パワーポイント(パソコン映像)で説明。ごみ投棄の写真を示しながらの経過説明、トレンチ・ボーリング調査の様子、有害物質の分析結果、これまでの県の対応が要領よくまとめられており一見の価値あり。報告集会では参加できなかった申請人にも見ていただきたい内容。
しかし、パワーポイントの内容について調停委員から質問等は一切なかった。
- 2度目の中断
パワーポイントによる説明後も被申請人は不出頭なのを受けて、調停委員が協議。この間、申請人らは控室で待機。
- 委員長が一方的に調停打ち切りを宣言。
再開後、委員長が一方的に調停打ち切りを宣言。
申請人、代理人がそれぞれ異議、抗議、疑問な点などを述べるのに対し、委員長は最初は「ご意見として承っておきます。」と述べていたが、申請人、代理人の抗議や疑問の発言が次々に続くと、やがて「これ以上議論するつもりはありません。」「退席しましょう」と述べて一方的に席を立つ。
- かくしてあっけなくすべてが終わった。
申請人や代理人が記者会見で怒りをぶちまけたのは言うまでもない。
疑問に感じた点、納得できない点
- 出頭確保のために何をしたのか。
県の事務方は、被申請人らの出頭を確保するためにどのような努力をしたのか全く分からない。しかし、被申請人全員が不出頭という通常考えがたい結果になったことを考慮すると、県の事務方は被申請人に対し調停には出頭してもしなくてもよいと述べるだけで、出頭するよう真摯に説得しなかったのではないかという強い疑問が残った。
- 被申請人の意見や意向はなぜ明らかにできないのか。
委員長の言うように調停は話し合いというのであれば、当然、その前提として当事者が意見を相互の相手方に伝えることが必要になる。ところが、調停では、プライバシー、個人情報を理由に被申請人の意見は一切明らかにされなかった。プライバシー、個人情報が開示されない形で被申請人の意見を申請人に伝える工夫も全く見られなかった。
これでは話し合いなどできるはずがない。
- 運営が一方的であった。
委員長は、当初から、被申請人の調停に応じない場合は調停が成立する見込みがない者として調停を打ち切ることもあり得ると述べ、実際に被申請人が誰も出頭していないことを確認すると早々と調停の打ち切りを宣言した。
裁判所で行われる調停でも、第1回期日に相手方が出頭しなくても、申立人の要望があれば相手方の出頭を期して2回目の期日指定をするのが通常だと思う。それを考えても、あまりに性急で一方的な終結宣言であった。
- 委員長以外の調停委員は何のためにいたのか。
委員長が一人で運営を仕切っていた。他の2人の調停委員は全く発言しないままで調停は終わった。いったい何のためにすわっていたのか。委員長も含め調停委員の人選について申請人からは疑問の声が上がっていた。
- 徳島県における公害調停制度の命日
調停委員や事務担当職員の対応からは、住民から提起されている問題を真摯に解決しようという姿勢を感じることはできなかった。むしろ、問題に蓋を使用という今までの県の対応がそのまま調停の運営にも表れていたように思う。
2008年4月11日は、徳島県で公害調停制度の「死んだ日」(八木代表のことば)として記憶されるべきだと思う。
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