徳島県議会議員、吉田ます子(代表質問原稿)

最後に、財政中期展望と知事の長期ビジョンについて

昨年2月議会で、豊岡議員の「長期ビジョンを持って政策立案を行うべき」との質問に答えて、知事は「大きな制度改革のうねりの中にあり、今では5年一昔、10年後を見通すことは非常に困難。長期計画を策定しても実効性は担保しにくい。」とおっしゃっています。確かに、将来の予測がつきにくい時代です。だから、「オンリーワン徳島の実現」ということで、3カ年の重点計画を立てられた、ということでした。

しかし、私たちが知事にお願いしたかったのは「長期計画を含む従来型の総合計画を立てよ」ということではありません。長期的な「方向性」と「ビジョン」を示してほしい、というのが、質問の本意です。
        
そこで、角度を変えまして改めて お聞きしたいと思います。
昨年2月に出された「とくしま財政中期展望」を見ると、それは平成19年度までの あと2年半の「展望」となっており、歳入の部分では、県税を内閣府試算の名目成長率を参考に、地方交付税や国庫支出金などは、現行制度をベースに、県債は現行制度をベースに歳出連動で試算。一方歳出の義務的経費のうち、人件費,扶助費は 過去5年間の平均伸び率により、退職手当については勧奨退職や普通退職の動向を見込んで試算されています。投資的経費は前年度比に機械的にマイナス5%や3%の数字を当てはめて試算、一般行政経費は前年度比マイナス1%で機械的に削減してあります。

これは、単に「今後も財政は厳しい状況が続くだろうから、無理は出来ない。とりあえず出費を適当なパーセント押さえて、この場をしのごう」というふうに私には読めました。団塊の世代の大量退職者が出始める平成19年から先こそ、義務的経費の急激な増大が、どれくらい財政に影響を与えるのか、非常に重大なところです。しかも、この展望によると19年度の起債制限比率は 19.6%になっています。20%ラインに近い、このまま行けば20年度には、確実に20%を超え、地方債の起債が制限されるのでしょうか。今の時期にそれが示されていないというのは、いかがなものでしょう。

この展望についての基本的な考え方には
「現状認識と課題意識を広く共有し、中期的な視点に立った今後の財政運営や、本県における構造改革等の検討の手がかりとすることを目的とする」と明記されていますが、実際は、本格的な「構造改革の検討の手がかり」と言えるようなものではない、と、知事自身はわかっていらっしゃるのではないでしょうか?
中期展望と名付けるからには、少なくとも財政再建のシナリオであるべきです。大きなメスを入れず、当座を何とかしのげればいいのか、それとも県財政を立て直す強い意志があるのか?
そこでお尋ねいたします。「長期総合計画」とまでは行かなくても、少なくとも10年ほどの財政展望を 今、しめすべきではないでしょうか。お答え下さい。


(コメント)


長期ビジョンと、財政展望については、制度改革のうねりの中にあるとしても、いくつかの確定要素はあります。たとえば、日本の人口は2006年にピークとなり、2100年には3分の1になります。しかも老齢人口が増えること、対策が始まっている地球温暖化問題、世界の水資源不足、砂漠化。一次エネルギーとして日本が52%頼っている石油は、40年後に枯渇、13%頼っている天然ガスは60年後に枯渇、原子力は安全性へ疑問があり、既存原子炉は20〜30年で老朽化し、供給能力にかげりがあるとすると、今何をなすべきなのか。

もちろん、県はこれらの環境問題、エネルギー問題、少子高齢化問題について、限りある予算の中で、国の方針どおりに少しづつ少しづつ対応されていますが、そのような重点化の度合い、スピードで大丈夫なのか、不安を覚えますし、県の最高責任者の知事には、この場を何とかしのいでいく、何とか乗り切っていくというマネージャー的役割だけでなく、遠くを見通す哲学者的役割を期待したいのは私だけではないと思います。

「宮城100年ビジョン」では「環境と資源の問題にどう向き合うかが、100年後、21世紀の潮流を変える」と述べられています。そして民主主義理念を制度として地域に根付かせるために市民力を鍛えること、経済成長率を豊かさの指標としてきた20世紀的価値観から脱却するため、家族と暮らす時間指数、ゆったり時間指数、地域貢献活動時間指数、緑地指数、バカンス取得指数、などさまざまな幸せ指標をもつことや、物や心を消費する社会から決別し、人と心を育む社会へと 暮らし方、生き方を変えていく勇気、など、夢のあるキーワードを示しています。

徳島に住む人たちが「住んで良かった」と思われるように、とよく知事はおっしゃいます。1000億かかる鉄道高架や、吉野川の上流域にさらなるダムは必要なのでしょうか。
一時的に県政についておられるのでなく、今後長く、徳島県のために働いて頂ける意志がおありなら、20年後、30年後、50年後の徳島のために、大きなビジョンを持って、
少なくとも財政展望の10年くらいは持ってほしいと強く思います。
*前向きな場合* 財政展望の作成をお願いいたします。