徳島県議会議員、吉田ます子(代表質問原稿)

次に、廃棄物問題についてお尋ねします。

この8月、阿波市に中央広域環境センターがオープンし、サーモセレクト式ガス化溶融炉による、2市2町の一般廃棄物の処理が始まりました。
県はこの施設に3億円の補助金を支出していますが、この大型溶融炉の導入について、幾つかの問題点があります。

第1に安全性の問題です。
サーモセレクトは7500時間の実証試験を経て、ドイツの技術検査協会からも高い評価を得ていました。普通のガス化溶融炉が熱分解で発生したガスでゴミを溶融するのに対し、サーモセレクトは純酸素で溶解、ガスは精製して工業用に使用、*300度というダイオキシンが発生しやすい温度を一気に飛び越え1200度から70度に排ガスが急冷されるため、ダイオキシンの再合成はない、とメーカー側の説明です。飛灰がないためバグフィルターも煙突も必要ないという、理論的にはかなりユニークなプラントのようです。

ところがこのユニークさが仇となって99年、ドイツのカールスルーエで事故を起こしました。ドイツの郡政府はこの事故の後、設計変更をもとめ、16億円の改修工事を終えて条件付許可が下りたようです。吉野町のプラントにこの設計変更がなされているのかどうか、はっきりしません。県に安全性は大丈夫かとの質問を委員会でしておりますが、社団法人「全国都市清掃会議」により「検証・確認報告書」が出されていることを持って、安全性が確認されたとしているようです。ところがこの検証・確認報告書は平成12年3月にドイツの事故の後に出されたものにも関わらず、事故の原因や設計変更については触れられていません。システムの心臓部であるガス急冷装置の変更もこの検証後に行われているようですが、その理由や内容の説明もなく、第3者機関による検証もなく、日本に「非常時についての法的規制」がないことから、設計変更ないままの導入である可能性があります。
また、報告書には「プラントの受注実績」4箇所が掲載されていますが、このうちスイス、ドイツのアンスバッハ市は、事故の後キャンセルになっています。さらに2004年には、ついにカールスルーエのプラントからも、度重なる故障と高コストにより操業をしていた会社が撤退したと聞いています。
(このように、安全性の面での不安を残しながら阿波市での操業開始となっています。)

第2に経済性の問題です。

たとえば、香川県直島では、豊島の産廃50万トンを年間5万トンづつ10年かけて溶融処理することになっていますが、2000年度には40億円の経費がかかっています。徳島県の現在の一廃処理費用は 1トンあたり6万4000円ですから、同じ5万トンなら32億円です。溶融処理によってかなり経費がかさむ可能性があります。兵庫県高砂市などコストが予定の倍近くかかったケースなど、ゴミ質によってメーカーの提示したコストに違いがでているようです。
   
第3に焼却炉の規模の問題です。
2002年度2市2町の、一日あたりゴミ排出量は約67トンです。今後、人口減少が予想されること、ゴミの分別・再資源化が進むと、相当のゴミの減少が予想されます。現在でも1日平均67トンに対し、120トンの処理能力は過大であり、2000℃を保つためにゴミを燃やし続けなければならない仕組みは、エネルギーが再利用されても、その熱効率による減少分を考えると明らかに無駄です。

またここでは「処理されたゴミはすべて回収物となって100%リサイクル。溶融してできたスラグは建設資材として利用」するそうですが、98年旧厚生省溶融スラグの取り扱い指針案は「焼却灰等は鉛等を含有することから 生活環境への不安がスラグの適正な利用を阻害する一因になっており、安定的な利用先が確保されないことが溶融固化の実施が進まない要因となっている」となっています。現在、路盤材需要の大部分はアスファルト・コンクリートと砕石で賄われており、排出される廃コンクリートのうち、路盤材に使われるのは約55%、残りは廃棄物として処理されており、溶融スラグの出番は少ないようです。各地で安全性の試験や溶融スラグを路盤材に使ったモデル事業が行われていますが、利用はあまり進まず、流通システムも開発途上です。

以上3つの問題点を考慮したときに、今後県内に一般廃棄物の広域処理として、大型ガス化溶融路を導入することは、循環型社会の形成に逆行するし、良く検討しなければなりません。

昨年、同じ主旨の質問をしました。知事は「3R、これがしっかりと達成をされ、そしてそれが見事に効果を発生するのであれば、このごみ焼却といった問題については、当然のことながら徐々に縮小されると考えている。」と答えられました。吉野町の120トンの大型炉に対し、実際のゴミの量は67トン。3Rが徐々に達成され、人口も減少傾向、もっとゴミは減っていく、他の5つの広域にも同じことが言えるでしょう。ダイオキシン対策なら、今は小型炉でもしっかりできるようです。建設コスト、運転コストともに格段に安いはずです。
財政の効率化を計るためにも、しっかりした検証が必要で、大型溶融炉は、今後徳島県に必要ないのではないでしょうか?
そこでお尋ねいたします。大型ガス化溶融炉は建設・運営コスト面でも、ますます自治体の負担を増大させ、安全性に疑問もあり、ごみ減量に逆行すると思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
また、分別によるごみの減少はもちろんですが、リサイクルの需給バランスがとれないなら、分別=ごみの減量にはつながりません。県が拡大生産者責任を求めることを毎年国への重要要望に入れて頂いておりますことは 評価いたしますが、国に求めるだけではなく県としても、県内製造業者や流通業者に対し、ゴミの出ない製品への切り替えや開発、梱包の簡略化など、もっと積極的に呼びかけるべきではないでしょうか?お答え下さい。


(再問対策)
(ごみ問題の地域広域化政策に従われるということですが、)大型溶融炉につきましては、導入するきっかけとなっている「ごみ処理広域化政策」は「人口10万人当たり1日処理量100トン以上」の方針で、「1人1日1キロ」のごみ焼却を想定していることになり、循環型社会の基本原則「ごみ減量」に逆行します。
すでに東京都の清掃工場ではごみ減量の進展と不況による「ごみ不足」から、焼却炉の休止が相次いでいるようです。横浜市の「G30プラン」は2010年までの10年間で30%のごみ減量のプランでしたが、僅か1年間で目標達成となり、2つの焼却場の廃止が今月14日に決まったばかりです。「ごみ処理広域化政策」は大型炉連続運転のため、ごみが大量に必要であり「大量廃棄社会」の存続を促しかねないものです。

(ダイオキシン対策としましては、)ダイオキシンは生成しないといわれる溶融炉の高温で、それ以外の有害な有機塩素化合物が生成するとの報告があり、ダイオキシン類のみに偏った有害物質対策は疑問です。ダイオキシンだけなら小型炉でも対応可能です。一種類の有害物質だけにこだわった燃焼条件の模索よりも、廃棄物の減量と「脱焼却」の方向をめざすべきです。

また「ごみ処理広域化政策」は厚生省課長通達にもとづくもので、法的根拠はありません。巨額の予算を投入して全国の一般廃棄物処理体制を大きく変えようとするのですから、十分な国会審議と国民的討論をふまえるべきです。97年の廃棄物処理法の大幅改正の中にも、広域化政策のことはでてきません。関連法規改正の国会審議中に、官僚機構の独断で広域化推進が決定されたと推測されます。焼却炉などの業界団体へ厚生省からの天下りが指摘されていますが、「癒着・利権」の構造はないのでしょうか。

排出抑制については、様々な障害があるでしょうが、徳島には国内初のゴミゼロ宣言をした上勝町もあることです。「環境首都」の名にふさわしい、国内トップランナーのゴミ政策へ転換してほしいと切に要望いたします。