徳島県議会議員、吉田ます子(代表質問原稿)

吉野川整備基本方針についてお尋ねします。

吉野川の「河川整備基本方針」を話しあう、国交省河川局の2回目の小委員会が、昨日開かれ、傍聴に行ってまいりました。原案に大きな変更はないまま、審議はすべて終了しました。

委員会に出された資料や、各委員の発言を聞きますと、第十堰は、はっきり治水上障害物とみなされ、基本方針案の中の「治水上支障となる既設固定堰については、必要な対策を行い、洪水を安全に流下させる」という文言がそのまま了承され、可動堰への可能性が明確に残りました。95年の第十堰建設事業委員会当時と、全く同じ第十堰の深掘れ、せき上げ、老朽化、の資料が配られたのには、10年前にタイムスリップしたのかと目を疑いました。これら3つの問題は、10年来、住民と旧・建設省が、新聞紙上やテレビ討論において、何度も議論し尽くしたことであり、それらの議論をふまえて行われたマスコミの流域アンケートや、徳島市の住民投票で、結果が出ていることです。
知事は、その世論の重荷をわかっていらっしゃるからこそ、知事選で「可動堰をつくるつもりはさらさらない」と表明され、昨年度の2月議会で「吉野川新時代」を高らかに宣言され、「まずは可動堰以外のあらゆる方法から」ということを、国にお願いされたのではないでしょうか?

昨日の小委員会は、「可動堰復活宣言」といっても過言ではないほどの内容でした。この間(かん)の徳島の経緯をよくご存じない方々が、国交省の資料に基づき、旧来の「工事実施基本計画」と全く同じ基本的内容を容認したものでした。
そして知事の代理で出席された下保政策鑑も、徳島の事情や、流域アンケートや、住民投票で示された民意について、何ら発言することなく、会議は終了しました。

そこでまず、知事にお尋ねいたします。
第十堰が、治水上の障害となることがはっきり認められ、可動堰復活宣言とも言えるような小委員会の結論は、知事の本意なのでしょうか? お答え下さい。


(再問)
圓藤元知事は、国が可動堰が必要だと言えば「生命財産を守るためには可動堰がベスト」と言い、国が可動堰は白紙と言えば、すぐに「可動堰は白紙」と言いました。
飯泉知事は、吉野川整備に関して流域住民の合意形成を行い、一刻も早く本当に必要な事業を行うために、「まずは、可動堰以外の方法で」と、この議場で堂々とおっしゃった、その知事の意向が、基本方針に生かされていないと思います。
昨日の小委員会の中で、基本方針に「治水上支障となる固定堰」と明記されていることに対して、ある委員から「固定堰が治水上支障となるというのは、はっきりしているのか。そうでないなら、この部分の表現を変えたらどうか」という主旨の提案がありましたが、元国交省河川局長である委員長が、治水上支障になるので抜本的対策が必要だと明言し、下保知事代理はその発言に何の異論も唱えませんでした。(個別の案件については、基本計画を作成する際に、十分に住民の意見を聞く)とおっしゃいますが、知事が提案された1.吉野川の河川整備と、2.抜本的な第十堰の対策のあり方を、分けて検討する前に、基本方針ですでに「第十堰が治水上支障となる」という結論が出てしまったのですから「分けて検討する」意味がないのではないですか?
検討も何も、はっきり治水上支障となる、ということが方針で出されたのですから。そうでないのなら、この点についてもう一度ご答弁をお願いします。
25日付の朝日新聞の社説にもありますように、いつまでも国が可動堰にこだわっていては、時間を浪費するだけではありませんか、お答え下さい。


(再々問)
この方針案には、いくつも問題点があります。方針の根幹の部分で、基準点岩津の基本高水ピーク流量を「既設ダムおよび流域内の洪水調節施設により毎秒6000トンカットする」となっていますが、現在、早明浦、富郷などのダムで3000トンカットしていますので、あと3000トンカットするためには、治水容量として約2億4000万m3もの洪水調節施設が新たに必要ということなります。調整施設とは、ダムか遊水池のことですよね。これは早明浦ダムの総貯水容量に匹敵します。上流域にこのような大きなダムをつくれる場所は、もうありません。それともどこかにそんなに広い遊水池があるのでしょうか。

知事代理の政策監が「堤防未整備地区や内水排除のポンプがない個所などがあるので、基本方針、整備計画をぜひ早くつくってほしい」と述べられたように、昨年は大きな台風被害により、私の地元のほたる川や川田川、いの川をはじめ、県内至る所に内水被害が発生しました。床上浸水の被害にあわれた方の声が今でも耳に残っていますが、吉野川流域に早急に必要なものは、ポンプ施設の整備、壊れない堤防づくりであり、森林整備も急がれています。縦割り予算を何とかして、ダム予算を森林整備に充ててほしいと思います。

これまでは、ダム計画があるために、堤防はここまでしかできないとか、ダムができれば内水被害が軽減するからポンプ施設は待ってくれ、といったことになっていたとの現場の声です。この基本高水の決定は上流域での新たなダム計画を容認することであり、さらに、必要な整備が遅れることになります。今までと何も変わらないのではないですか。

吉野川は国が管理する一級河川ですが、第十堰問題の議論をとおして、95年には建設省の洪水計算の誤りが判明、せき上げの根拠や流量のデータも開示されないままです。同じく同省が76年の外部調査委託で可動堰は安全、と出ていた結果を隠していたことが99年に判明、2001年には模型実験データの情報操作も判明しました。

これらは多くの住民が自分たちの故郷の川のあり方を真剣に勉強し、議論し、関心を持つなかで、明らかになってきたことです。それは真の民主主義の姿であり、地方分権の姿です。1昨年、私は初めての代表質問でも、このことを申しました。もう同じことを言いたくありません。知事のおっしゃる「吉野川新時代」が、本当に新しい住民参加の川づくりの始まりであるならば、知事は住民の代表としても、可動堰反対を公約された政治家としても、しっかり国に、もの申して頂きたいと思います。


(参考)
基本高水の検証にも、実測流量データのない大正元年洪水で流量を推定してそれを検証につかっています。推定ではなく実測流量がわかっている期間を対象にすべきです。

固定堰がどれくらいの治水上の障害となるかは、これからの検討の場で、住民意見をふまえて詳しく議論されることになる、これからの問題、と答えた場合、

それなら、小委員会の深掘れ、かさ上げ、老朽化の資料を、認めるのか?
この資料は、県がダム審の時、使っていた資料と同じで、150年に一度の洪水により、第十堰のせき上げによって、堤防を42センチオーバーし、可動堰が必要、という結論を導いた資料。
この資料は、科学的根拠に基づいていたのか?
それとも、国が出した資料をそのまま出しただけなのか?