徳島県議会議員、吉田ます子(代表質問原稿)

渇水対策を含む水の危機管理について、お聞きいたします。

昨年は10個の台風が徳島県に上陸し、中小河川の氾濫、床上・床下浸水を引き起こし、県民生活に大きな打撃を与えました。そして昨年と対照的に今年は、大渇水の年となりました。
台風14号以前の早明浦ダム上流域 今年度の降水量は、平年の約47%、早明浦ダムの貯水率も8月20日と9月1日にゼロとなり、(水力発電用の水を放流、)吉野川も大渇水となりました。昨年の洪水、今年の渇水と、21世紀に起きるといわれている異常気象が立て続けに起こりました。

地球はその7割が水で覆われていますが、そのうち淡水として私たちが利用できる水は僅か0.7%にしか過ぎません。
21世紀が「水の世紀」といわれるように、アフリカや東南アジアなど世界各地でウォータークライシスが起こっています。水の豊かな温帯モンスーン気候の日本、そして大きな河川に恵まれたこの徳島も、たびたびの例年の那賀川渇水、今年の吉野川渇水のように、今後、気候の変動によりどのようなウォータークライシスに直面しないとも限りません。

知事が所信で表明された渇水調整制度の創設は、会派でも提案を検討していたところであり、大いに評価したいと思います。他にも農業用水確保や企業の保安用水確保のためのさまざまな施策、利水企業への融資制度の創設など、「来春には同じ渇水被害を生じさせない」と頼もしいお言葉でした。

さて、私たちは中・長期的視点に立ち、県にまだ導入されていない新たな水資源を提案するために、雨水利用で有名な東京都墨田区を視察してきました。
墨田区の場合は、緑地率が極めて低く、長年、都市型洪水に苦しんでいました。平成7年国技館に雨水利用を導入したことに始まり、現在77の施設で1万トン以上の雨水を貯め、消防用水、トイレ、冷却塔補給水、緑化散水などに利用しています。これは非常時20万人分の一日の生活用水となります。大きなビルを立てるときに必然的に出来る地下の空洞を利用するので、高い水道料金を払わなくて済む分、5〜6年で設備投資費用を回収可能で、そのため民間業者も積極的に導入しているようです。酸性雨は初期降雨のみであり、コンクリートのアルカリと中和して良い水質になることはテスト済みです。貯水槽の容量に応じて助成制度を設け、平成15年度までの9年間で190件の実績があり、開発指導要綱にも開発区域500m2以上に、雨水利用の指導を盛り込んでいます。
河川に流れ込むピークの時間帯を遅らせるということでも雨水設備が有効に働いており、洪水対策として、渇水対策として、非常用防災対策として、また経費節減にもなり、知事のお好きな1石何鳥もの効果です。

先日、防災学習会で、西沢議員のご紹介により神戸市・危機管理局の職員の方に阪神・淡路大震災の経験を聞かせていただきました。震災の教訓として「危機は避けられない、危機は突然に起こる、危機は自分が持っている手段だけでは手に負えない」ということでした。飲料水は全国からの救援物資としてたくさん届けられたそうですが、一番困ったのはトイレや洗濯などの生活用水、ということでした。(今後、危機管理は「ライフラインからライフポイントへ」の時代です。)

そこで提案いたします。
県立高校など、今後新設される県の公用施設には雨水貯水設備を導入してはいかがでしょうか?
もちろん一つの施設や、公用施設だけでは、不十分ですが、徳島県があらゆる水危機に本格的に対応するために、今後、他の公用施設や民間施設にも広げていく可能性を、さらなるメリットと考えれば、費用は小さな、しかし効果は大きな初めの一歩として、是非県立高校など、これから立て替えが予想される県有施設への導入を検討して頂けないでしょうか。知事の前向きなご答弁をお願いいたします。


(再問)
(再問)
雨水利用について、(仮称)沖縄県立高度・多機能病院も視察してきました。来年4月完成予定、 救急救命センター、母子総合医療センターを併せ持つ434床、沖縄南部県域をカバーする病院で、雨水利用の設備を取り入れています。建物の屋上面や、バルコニーに降った雨水を濾過、滅菌し、中水としてトイレ洗浄水や空調用冷却水などに使用される予定です。災害時の雨水利用可能日数は、最大貯留時で約4,3日です。
他にも、沖縄県では県立北部病院、中部病院、県本庁舎、県立美術館、博物館、県立高校、県営住宅など、平成に入ってから建設されたあらゆる公共施設に雨水利用設備を備えています。
沖縄大学キャンバスも見てまいりましたが、ここは、屋上をそのまま雨水プールにしているのと、屋上雨水タンクを合わせて、水道料金で年間120万円ほどの黒字です。

新たに雨水設備をつけるには膨大な費用がかかりますが、これから立て替えの予想される県立学校や警察署、県立中央病院や県有施設なら、加算費用は短期で回収可能です。
徳島でも、降水量の少ない地域の知恵を借りるときが来ています。水に恵まれた地域には採用されにくかった雨水利用は、実は雨の多い地域ほど効率が良いのです。県立高校や警察署などは、災害時にも避難所として使用される可能性が高く、特に学校は教育効果もあり、危機管理と渇水対策を兼ねた、費用対効果の極めて高い県立施設の雨水利用、県民のためにぜひ前向きにご検討をお願いいたします。